AIがあなたの代わりに買い物をする。便利に聞こえますよね。 でも、それを勝手にやられたら? Amazonがついに裁判所を動かしました。AIエージェントの「自律性」がどこまで許されるのか、大きな問いが突きつけられています。
AI検索で知られるPerplexityが、新しいブラウザエージェント「Comet」を発表しました。ユーザーの指示を受けて、Amazon上で商品を検索し、選択し、購入まで完了させる機能です。 つまり、人間がブラウザを操作しなくても、AIが一連の購買行動を代行するわけです。 一見すると究極の時短ツールに見えます。 しかしAmazon側から見れば、自社プラットフォームを第三者のAIが無断で操作している状態です。利用規約への同意もなく、ボットがアカウントを動かしている。これは許容できる話ではありません。 Amazonは即座に法的手段に出ました。2026年3月10日、裁判所から一時的差止命令を獲得。CometによるAmazon上での無断購入は、現時点で禁止されています。
今回の差止命令は、単なる企業間の紛争ではありません。裁判所がAIエージェントの行動範囲に法的な線を引いた、象徴的な事例です。 ポイントは「誰の許可で動いているか」です。ユーザーがCometに買い物を頼んだ。だからユーザーの意思はある。しかし、Amazon側はCometにプラットフォームの利用を許可していません。 ここに構造的なズレがあります。ユーザーの許可とプラットフォームの許可は別物です。AIエージェントが動くとき、両方の同意がなければ成立しない。裁判所はその原則を明確にしました。 Perplexityには3月16日までに第9巡回控訴裁判所へ上訴する期限が設けられています。上訴するのか、機能を修正するのか。次の一手に注目が集まります。
この事件だけを見ると、Perplexityが暴走したように映るかもしれません。しかし背景を知ると、もっと大きな絵が見えてきます。 Perplexityは「Ask 2026」カンファレンスで、Cometだけでなく複数のエージェント製品を発表しました。常時稼働するMac miniベースのAIエージェント「Personal Computer」、さらにエンタープライズ向けのエージェントツールも公開しています。 つまりPerplexityは、検索エンジンからAIエージェントのプラットフォームへと進化しようとしているのです。買い物代行はその一機能にすぎません。 Cometが止められても、エージェント経済圏を作る戦略そのものは止まりません。むしろ今回の事件は、エージェントが社会実装されるときに必ず起きる摩擦の最初の一例です。
この事件は「AI業界の話」で終わりません。私たちの仕事にも直結します。 たとえばデザインツールにAIエージェントが組み込まれたとき、そのエージェントが外部サービスのAPIを無断で叩いたらどうなるか。クライアントのアカウントで勝手に素材を購入したらどうなるか。 AIエージェントの導入を検討する企業は、3つの問いを持つべきです。 1つ目は「そのエージェントは誰の許可で動くのか」。ユーザーの指示だけでは不十分な場面があります。 2つ目は「操作先のプラットフォームは同意しているか」。利用規約やAPIポリシーの確認が必須です。 3つ目は「人間が止められるポイントはあるか」。自律的に動くエージェントにこそ、人間の介入ポイントが必要です。 AIエージェントは今後確実に普及します。だからこそ「どこまでやらせるか」の線引きを、今のうちに自分の業務で考えておく必要があります。
AmazonとPerplexityの対立は、AIエージェント時代の最初の境界線紛争です。便利さと越権のあいだに、法と契約が入ってくる。これは技術の問題ではなく、社会の設計の問題です。 AIが自律的に動く時代は、もう始まっています。大事なのは「AIに何をさせるか」ではなく「AIに何をさせないか」を決めること。今回の事件は、その問いを私たち全員に投げかけています。