日本の二大広告会社である博報堂と電通デジタルが2026年の年頭に発表した声明は、AIが本格的に社会実装される時代における広告、クリエイティブ、マーケティングの未来図を明確に示しています。 https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/121348/ https://www.dentsudigital.co.jp/knowledge-charge/articles/2026-0105-topmessage 両社のメッセージを包括的に分析することで、2026年に加速する日本の広告業界の主要な潮流を読み解くことができます。 その核心は、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、「人間の能力とクリエイティビティを拡張する」ための戦略的なエンジンとして位置づける点にあります。 音声配信でも同じテーマでお話ししました。 ながらインプットしたい方はぜひご活用ください。 https://youtu.be/qUtIK4Z10qM
両社は、AIがクリエイティブの領域にもたらす影響について、共通の認識を持ちつつ、独自の視点を打ち出しています。
博報堂は、AIを「自動化や効率化にとどまらず、人間の能力とクリエイティビティを拡張するものという考えを根底にした“AI-POWERED CREATIVITY”を打ち出し、生活者発想のさらなる進化を目指してまいります」と表明しています。 これは、AIを人間の創造性を代替するものではなく、むしろ「拡張」し、博報堂の根幹である「生活者発想」をより深く、広く実現するための手段と捉えていることを示しています。 AIによって得られた膨大なデータやインサイトを基に、より生活者の心に響く、新しい驚きや感動をもたらすエクスペリエンスをデザインすることに、クリエイティビティの焦点が移っていると言えます。
電通デジタルは、2025年の成果として「クリエイティビティ×テクノロジー」を競争力の源泉として掲げ、「クリエイティビティとは『制作表現の領域』に限られるものではなく、すべての領域で発揮されるべき力」であると強調しています。 これは、データ分析、メディアプランニング、課題解決のアプローチといった「非制作領域」においても、クリエイティブな思考が突破口を生み出すという考え方です。 AI技術(テクノロジー)の進化によって、データ処理や自動化が進むからこそ、人間が介在するすべてのプロセスで「発想の転換」というクリエイティビティが求められるようになります。
両社の声明からは、AIを基盤としたマーケティングの「統合」と「AIネイティブ化」が2026年の主要な動きとなることが読み取れます。
博報堂は、経営統合の最大の目的を「複雑化・複層化するクライアントの課題、特に事業課題の解決までを視野に入れた提案に対応すること」としています。 これは、従来の広告コミュニケーションの枠を超え、ブランドを起点とした経営支援や、顧客接点の開発・実装といった、より上流の事業領域に踏み込むことを意味します。 AIは、この事業課題解決に必要な「広大な生活者インターフェースを通じて得られるデータの統合」を可能にする基盤技術として機能します。
電通デジタルは、電通グループ全体のAI戦略「AI For Growth 2.0」に基づき、マーケティング領域のAIネイティブ化を一層推進する方針を示しています。 これは、AIを単なるツールとして導入するのではなく、組織構造、業務プロセス、提供サービスそのものをAI前提で再構築する「AIネイティブ」へのシフトを意味します。 また、日立製作所やMetaといった外部企業との戦略的協業を象徴的な取り組みとして挙げていることから、AIネイティブ化は自社内にとどまらず、技術パートナーとの連携を通じて、より高度なソリューションとしてクライアントに提供されることが予想されます。
サイバーエージェントの「CA-GAS」の発表は、AI時代の広告技術の具体的な進化の方向性を示しており、博報堂・電通デジタルの戦略とも密接に関連しています。 https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=32577 サイバーエージェントが開発した「生成AIアカウント構造『CA-GAS』」は、従来の「キーワード起点」から「クリエイティブ起点」への転換を提唱しています。 これは、生成AIの強みである「意図理解」と「コンテンツ生成」を活用し、ユーザーの多様な検索意図に合わせた最適なクリエイティブを自動で生成・配信する手法です。 この動きは、AIがユーザーの「インテント(意図)」を深く理解し、その意図に最適化された体験(クリエイティブ)を提供するという、より高度なパーソナライゼーションの時代が到来したことを示唆しています。
2026年、日本のトップ広告会社が描くAI時代の広告・マーケティングは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、「生活者価値デザイン」や「AI For Growth」といった上位概念を実現するための戦略的インフラとして捉えることに集約されます。 この潮流は、以下の3つの主要な動きとして具体化します。
AIによって解放されたリソースを、より本質的な「生活者エクスペリエンスのデザイン」や「非制作領域における発想の転換」に注ぎ込む。
AIによるデータ統合を武器に、クライアントの事業課題解決までを視野に入れた、より深く、統合的なパートナーシップを構築する。
組織全体をAI前提で再構築し、ユーザーの「意図理解」に基づいた、よりパーソナライズされた広告技術(例: CA-GAS)を実装する。 これらの動きは、日本の広告業界が「広告会社」の枠を超え、クライアントの「事業成長パートナー」へと進化していく、2026年の明確なビジョンを示しています。