外出先でスマホを開いたら、頼んでおいた調査がデスクトップに置いてありました。 私がやったのは、電車に乗る前にiPhoneからメッセージを1通送っただけです。「最近のAIエージェント市場の動向をまとめて」と。30分後にスマホに通知が来て、Mac上のClaudeがレポートを仕上げていました。 PCの前にいなかったのに、AIが仕事を続けていた。この体験は、正直に言って衝撃でした。 Anthropicが本日リリースした「Dispatch」。これがどういう機能で、何ができて、何がまだできないのか。リサーチプレビューを触った正直な感想をお伝えします。
Dispatchは、Mac上で動くClaude Coworkのセッションを、スマホから遠隔操作できる機能です。 QRコードでiPhoneとMacをペアリングするだけ。あとはスマホからメッセージを送れば、Mac上のClaudeがファイル操作もブラウザ操作も実行してくれます。 これは単なるリモートデスクトップではありません。Claudeがデスクトップ上で安全な実行環境の中でタスクを処理し、結果を返してくれる仕組みです。 Dispatchは新しい能力を追加するのではなく、「指示する場所」をPCからスマホに広げた機能です。Claude Coworkが元々できることの範囲内なら、スマホから指示しても同じように動きます。
MacStoriesのレビューをもとに、Dispatchで成功したタスクを紹介します。
情報検索は得意分野です。 「デスクトップにある○○というキーワードを含むファイルを探して」と頼むと、フォルダを横断して見つけてくれました。クライアント先に向かう電車の中から「あの資料どこだっけ」と聞けるのは地味に助かります。 調査・レポート系のタスクは安定しています。 冒頭の「AIエージェント市場の動向まとめ」のように、PCのブラウザを使って情報を集め、構造化する作業がDispatchの得意分野です。午後の打ち合わせで使う素材の下調べを、昼休みにスマホから投げておく。そんな使い方ができます。 Google DriveやNotionとの連携も動きます。 Claude Coworkの「Connectors」機能で外部サービスと接続していれば、「Notionの今週のメモを要約して」といったタスクもこなします。 ただし、共通して言えるのは「即座に結果が返ってくるわけではない」ということです。タスクを送って、しばらくしてから結果を確認する。この非同期スタイルがDispatchの使い方です。
ここからが大事です。リサーチプレビューという段階を正直に伝えます。 成功率は5割程度です。MacStoriesのレビューでも「about a 50/50 shot whether what you try will work」と評されています。これは誇張ではなく、私の実感にも近い数字です。 「Shortcutsを開いて」と頼んでみたら、起動できませんでした。Todoistのタスクをリストアップしようとしたら、認証エラーで止まりました。ログインが必要なサービスとの連携は、まだ不安定です。 SafariのアクティブタブからURLを取得する、といった細かい操作も動くときと動かないときがあります。 つまり「完成度の高いツール」として使うには早いです。でも、情報検索や調査レポートのように「時間はかかってもいいから、結果だけ置いておいてほしい」タスクなら、今の段階でも十分に使えます。
機能の完成度はさておき、Dispatchが示す方向性は重要です。 これまでのAIは、PCの前に座っているときだけ動く存在でした。ChatGPTもClaudeも、チャット画面を開いて指示を出し、結果を待ち、次の指示を出す。その間、人間はずっとAIの横にいる必要がありました。 Dispatchは、この前提を壊します。 朝8時、通勤電車の中からスマホで「今週の競合動向をまとめて」と送る。9時に出社してMacを開くと、レポートが並んでいる。10時の打ち合わせ中にふと思いついた調査を、スマホからClaudeに投げておく。昼休みに結果を確認する。 これは「AIとの非同期協業」と呼ぶべき新しい働き方です。 AnthropicはClaude Codeで「Remote Control」を先にリリースしています。開発者がターミナルセッションを遠隔操作できる機能です。そしてDispatchで、同じ思想を一般ユーザー向けに展開しました。 2つの機能を並べると、Anthropicの戦略が見えます。「AIが人間の横にいなくても仕事を進められる世界」を、開発者から一般ユーザーまで一気に広げようとしているのです。
Dispatchを試すには、以下の3つだけです。 ステップ1: Claude Desktopを最新版にアップデートする claude.com/downloadからダウンロードするか、既存のアプリを更新してください。 ステップ2: Coworkを開き、Dispatchオプションを選ぶ Coworkセッション内に「Dispatch」という新しいオプションが表示されます。 ステップ3: 表示されたQRコードをiPhoneでスキャンする ClaudeのiOSアプリがインストールされている必要があります。スキャン後、サイドバーにDispatchエントリが出現すれば準備完了です。 対応プランについて:
Dispatchは、リサーチプレビュー段階の荒削りな機能です。 でも、この機能が指し示す方向は明確です。「人間がAIの横にいなくていい時代」の入口がここにあります。 私が次に試したいのは、朝の通勤中にその日の仕事の段取りをClaudeに投げておくこと。オフィスに着いた時点で、調査が終わっていて、資料の骨子ができていて、あとは判断するだけ。そんな働き方が、もう手の届くところにあります。 まずはClaude Desktopのアップデートから始めてみてください。