本記事は、数々のヒット作を生み出してきたクリエイター佐藤雅彦氏の思考法を、現在開催中の展覧会の内容を基に解き明かし、あなたの仕事に明日から使えるヒントを提供します。 https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_satomasahiko/ 私も佐藤雅彦展に行ってきました。 https://twitter.com/kawai_design/status/1942202109505786364
「ピタゴラスイッチ」や「だんご3兄弟」、そして「ポリンキー」や「バザールでござーる」のCMなど、誰もが一度は触れたことのあるコンテンツ。これらすべてを手掛けてきたのが、メディアクリエイターの佐藤雅彦氏です。 横浜美術館で開催されている大規模な展覧会「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」では、彼の作品そのものではなく、その裏側にある「作り方」に光を当てています。 佐藤氏は「作り方が新しければ、出来たものはおのずと新しい」と語ります。これは、表面的な結果だけでなく、そこに至るプロセスやルールそのものを革新することの重要性を示しており、あらゆるビジネスにおける企画や開発に通じる考え方ではないでしょうか。
佐藤氏が手掛けたCMには、耳に残って離れないという共通の特徴があります。例えば、「ドンタコスったらドンタコス」のように、製品名をひたすら繰り返す。 これは、商品の詳細な説明をあえて省き、記憶に残る要素を一つだけ選び抜き、それを徹底的に反復する手法です。15秒という短い時間で伝えられることは限られます。 その中で最も効果的なのは、視聴者の記憶に深く刻み込むこと。この単純ながらも計算された繰り返しが、人々の頭の中に残り、無意識に口ずさませる力を持っているのです。
この記憶への刷り込みは、さらに巧みな戦略へとつながります。覚えやすく、真似しやすいフレーズは、人から人へと伝染していきます。CMを見た人がそのフレーズを口ずさむことで、その人自身が次の広告塔、つまり「メディア」となるのです。 これは、SNSが存在しなかった時代に、口コミによる情報の連鎖、今でいうバイラルマーケティングを設計していたことに他なりません。 さらに佐藤氏は、CMの間に別のCMを挟んでクイズの答えを発表するなど、視聴者の行動を巧みに操り、チャンネルを変えさせない「メディアハック」という手法も実践していました。 これは、単に情報を受け取るだけの存在だった視聴者を、能動的な参加者へと変える画期的な試みでした。
佐藤氏のすごさは、感覚的なものだけに留まりません。 彼の初期のグラフィックデザインを見ると、すべての要素がグリッド線上の四角い箱の中に配置されるという、極めて厳格なルールで作られています。一見すると無機質でドライな印象ですが、その緻密に計算された配置が、時代を感じさせないシャープで洗練された「かっこよさ」を生み出しています。 これは、感情的な表現に頼るのではなく、論理的で知的なアプローチによって、人の心を動かす新たな表現を生み出せることを証明しています。しっかりとした骨格や仕組みをまず構築することが、結果として斬新で力強いアウトプットにつながるという事実は、多くのビジネスパーソンにとって大きな学びとなるはずです。 この展覧会は、横浜美術館にて2025年11月3日まで開催されています。論理と計算によって人の心を動かす佐藤雅彦氏の世界に、あなたも触れてみてはいかがでしょうか。
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