「誰かの役に立ちたい」 その美しい願いが、実はあなた自身を蝕み、結果として「誰も救えない」状況を作り出しているとしたらどうでしょうか。 効率よく人を救うための唯一の解。 それは、逆説的ですが「人を救おうとしないこと」です。 より正確に言えば、「自分の身を削ってまで救おうとしないこと」です。 なぜ、利他的であるために、まず「利己的」であらねばならないのか。 稲盛和夫やイーロン・マスク、中村天風といった先人たちの思考を紐解きながら、持続可能な「救済」のロジックを解説します。
人を助ける行為には、必ずリソースが必要です。 時間、体力、精神力、そしてお金。 多くの心優しき人々は、自分の生命維持に必要なリソース(元本)を切り崩して、他者に分配しようとします。 しかし、これは「マイナスサム・ゲーム」です。 あなたが疲弊し、倒れてしまえば、助けられたはずの人々も再び路頭に迷い、さらにあなたという「救い手」を介抱するコストまで社会に発生させます。 これは救済ではなく、リソースの浪費です。 人を救うために必要なのは、自己犠牲ではなく「余剰」です。 自分のコップから溢れ出た「余り物」だけを配る。 これ以外に、永続的な人助けの方法はありません。
歴史に名を残すリーダーたちは、一見すると利他的に見えますが、その根底には強固な「自己充足」があります。
京セラ創業者・稲盛和夫氏は「利他」を説きましたが、それは決して「赤字を出してでも施しをせよ」という意味ではありません。 京セラフィロソフィでは、まず高収益体質を作り、自分たちが盤石になることを目指します。 企業(自分)が満たされ、力が溢れているからこそ、従業員を守り、税金を納め、社会に貢献できるのです。 「衣食足りて礼節を知る」の通り、まずは自分が満ちていなければなりません。 https://www.kyocera.co.jp/inamori/about/thinker/philosophy/index.html ■ 中村天風の「絶対積極」 運命を切り拓く哲人・中村天風は、まずは自分の心を「絶対積極」の状態——何事にも囚われない、喜びと感謝に満ちた状態——に置くことを説きました。 自分が太陽のように燃えていなければ、冷え切った他人を温めることはできません。 まずは自分が最強の状態(=利己的なまでの自己充実)にあって初めて、その余波が他者を救うのです。 https://www.tempukai.or.jp/
では、私たちは何を配ればいいのでしょうか。 お金や時間は、配れば確実に減ります。 しかし、この世には「配っても減らない、魔法の資産」が存在します。 それは、スキル、経験、知識、そして「言葉」です。 例えば、あなたが苦労して習得したプログラミング技術や、困難を乗り越えた経験談。 これらは、他人に教えたり伝えたりしても、あなたの中から消えることはありません。 むしろ、教えることで知識は定着し、あなたの「説得力」という資産は増えていきます。 これを経済学では「非競合性」と呼びます。 自分を満たすために必死で身につけたスキル(利己の産物)が、結果として他人の問題を解決し(利他)、しかも自分の資産は減らない。 これこそが、効率のよい救済の正体です。
「利他的になるには、自分がまずは幸せにならなきゃ」 最近私が感じていたその直感は、生物学的にも経済学的にも正解だったと知りました。